2020年はかつてない厄災に見舞われ、個人も企業も経験のない辛苦をしているわけですが、それを機に「オンライン元年」になろうとしています。
今年は小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金など、国・自治体から、ECビジネスへの転換に手厚い補助金が出ていますので、EC(ネットショップ)への参入を本気で考える卸業、小売業の経営者にはある意味チャンスで、大きな支援です。
しかしEC開設にあたり、どのような経費が必要かを事前に知らないために、想定外の見積を見て、結局尻込みして終わってしまう、ということもしばしば出会います。
ECは普通のホームページより、お金がかかります。
しかもランニングで費用がかかります。
初めてECを構築される方に、EC開設にかかる経費、そしてECの選び方、特徴などをご説明いたします。
<ECの種類>
ECの作り方には大きく分けて、次の3つに分類できます。
A:楽天市場、Yahooショッピングなどのモール出店
B:CMS等での手作り構築ショップ
C:GMOメイクショップ、カラーミーなどのASPカートでの構築ショップ
A:楽天市場、Yahooショッピングなどのモール出店
リアルで言いますと、百貨店やイオンモールのテナントということになり、集客はある程度最初の立ち上がりから見込めます。しかし、出店料が初期費用、月額費用、売上手数料などがかかります。
B:CMS等での手作り構築ショップ
有償、無償がありますが、EC-CUBEや、Wordpress などをベースに、独自にネットショップを一から作ります。最初にWeb制作会社に対して、制作費と、独自のレンタルサーバ費、SSL費がかかります。
C:GMOメイクショップ、カラーミーなどのASPカートでの構築ショップ
リアルで言いますと、居抜き物件で商売を始めることができ、サイトの改修も少しで済み、商品を並べるだけで、すぐに商売が始めることができます。
ABC全てに共通してコストがかかり、ECが初めての企業様で気が付かないコストがあります。
それは決済代行会社へのコストです。ECの場合、現金や銀行振込で購入代金を回収することは現実的ではありません。お客様にはクレジットカード、コンビニ払い等で支払っていただくことになりますが、たとえばクレジットカードは支払う側は無料ですので意識がありませんが、使われる側には手数料がかかります。JCB、VISA、MASTERなど多品種のクレジットカード決済が適応されるようにするためには決済代行会社との契約は不可欠です。
下記はGMOペイメントサービスさんの料金です。どこも大きく変わりませんので、参考にしてください。

※2020/08/28 GMOペイメントサービス様のWebサイトから引用
次にそれぞれのEC構築でかかる経費を考えてみます。
A:楽天市場、Yahooショッピングなどのモール出店にかかるコスト
楽天市場を例にとりますと
ライトプラン
月額出店料 39,800円(3ヶ月一括支払い)
システム利用料 売上の4.5~5.5%(月間の売上が100万円以下)
がんばれプラン
月額出店料 19,800円(12ヶ月一括支払い)
システム利用料 売上の6.0~7.0%(月間の売上が100万円以下)
スタンダードプラン
月額出店料 50,000円(6ヶ月一括支払いを2回)
システム利用料 売上の4.0~4.5%(月間の売上が100万円以下)
上記の基本料金以外に
楽天メッセ 3000~5000円/月
購入者の楽天ポイント分の共有負担など、別途に2%くらいが必要になります。
それ以外に、適時行われるイベント、キャンペーンへの参加には参加料が必要になります。
出店料はかかりますが、構築した後が、そこそこ楽ですので、個人的には楽天市場へ2店舗出店しました。
B:CMS等での手作り構築ショップ
ネット通販向けのテーマ、プラグインに、有償、無償がありますが、たとえばEC-CUBEやWordpressのプラグインWooCommerceなどは無償で有名どころのソフトですが、おそらく一般の方では、上記のソフトを自分で構築することはできません。Web制作会社に制作をお願いすることになりますが、イニシャルで制作費は50~200万円程度は見込む必要があります。個人、自社で一から作るとなれば、クレジットカード情報を扱うことから、SSLというセキュリティサービスをWebに導入する必要があります。

2020/09/09 セコムさんのSSLサーバのサイトより抜粋
たとえばセコムさんであれば、年間5.5万円~13万円、これが毎年かかります。
あとネット通販は通常のホームページより、性能のいいサーバを選択したいところですが小規模ECであれば共用サーバで対応できます。これが3000~5000円/月くらいの価格であります。一度作ってしまうと、ランニングでかかるものは、ドメイン・サーバ・SSL、そして決済代行会社への費用だけとなります。
C:GMOメイクショップ、カラーミーなどASPカートでの構築ショップ
最後に、レンタルカートと呼ばれるECサービスを利用してEC構築をする方法です。
サービスによっては、テンプレートと呼ばれるひな型がある程度準備されているものが多く、頑張れば初心者でも、制作できるサービスです。
サーバ、SSLなどを個別に契約する必要もなく、月々の利用料を支払うだけです。
例として、GMOメイクショップさんは、初期費用10000円、システム利用料10000円/月ですので割安です。テンプレートをカスタマイズして独自デザインを作ることができますが、イニシャルで制作会社に構築費用が必要です。決済代行会社は各サービスによって使える会社が決まっていますが、どこも価格的には大きく変わりません。
EC構築の3つの手段とその違いがわかりましたでしょうか。
毎月の運営費用として、2万円~5万円程度は覚悟しなければなりません。無論広告費は含んでいません。
今までホームページを作りっぱなしで、年間サーバ・ドメイン以外にお金は1円もかけてない、という方であれば、ECも同様に、作ったらお金はいらないと思っているとすれば、その考えは間違いです。ECは新しいビジネスです。ビジネスにはそれに見合った経費は必ずかかるものです。しかしリアル店舗を考えれば、経費は限定的です。
お金がかかるのであれば、ECは踏み込めない、という方には、出店料のいらないヤフオク、メルカリで始める、という手があります。ヤフオク、メルカリは中古オークションに限定しません。新品の販売もあります。もちろん個人以外の法人出店も多くあります。
商品の出品、お客様とのやりとり、購入手続き、梱包、決済、評価までのトータルをオークションサイトで経験するのもいいかもしれません。
冒頭の案内に戻りますが、今年はオンライン元年、ECへの補助金は手厚くなっています。
お得な情報は乗り遅れないようにしましょう。
執筆:加門 京夏